OB 佐々木伸次朗


O Bの佐々木です。

 私は米国フロリダ州オーランドというところで町道場を経営しています。その傍ら、U C F(フロリダ中央大学)で柔道の授業の講師もしています。この大学の研究の一環として自閉症を患う、5歳から18歳の子供達に柔道の指導を4年前から始めました。

昨年までは子供達だけのクラスでしたが今年は親子で柔道をするという新しい試みで取り組んでいます。土曜日の午後に45分のクラスを2クラス、片方は親子で参加するクラス、もう片方は子供達だけで参加するクラスに分かれて行っています。この新しいプログラムは柔道が自閉症の子供達の睡眠にどのような影響があるのかというデータの収集が主な目的ですが、クラスを教えている私にとってはそのデータよりも、クラスに参加している方々がいかに柔道を楽しんで、日々の生活に少しでも役立っているかどうかという事を意識して指導しています。

2月から始めたので3月の現時点では次が7回目のクラスになりますが、親子で参加するクラスと子供達だけで参加するクラスでは目に見える差がで始めています。

クラスの内容は礼作法から始まり、軽い準備体操を行い、手足のコーデイネーションのトレーニング、エビや逆エビは難しいのでそれらに似た動きをして、柔道の伝統的な練習をできるだけ取り入れるようにしています。受身は安全性と生徒の恐怖感を和らげる事を第一に考えながら、クラッシュパッド(投げ込みマット)を有効に使い、後ろ受身と前受身を中心に教えています。 

自閉症の特徴として人に触ったり、触られたりするのがあまり得意ではない事があります。ですので、組み合わず、大内刈、大外刈、背負投の打込みを3つの詳細にまとめて出来るだけ簡単にして一人打込みで練習しています。

手と足の連絡の改善を狙えるので、私のクラスではこの打込み練習を重点的に実施しています。最後に生徒と一緒に参加している保護者の方も私達を数回投げてワーワーと盛り上がりながら、整列してクラスが終わります。 

4年前に始めた時からずっと続けている生徒が一人だけいます。この生徒は会話をするのもなかなか困難なほど症状が重度ですが、パンデミックで道場でのクラスからオンラインのZoomでのクラスに切り替えた時から自宅で父親のサポート付きで続けてみたところ、今まで全くできなかった内股の動きや、大内から大外、大内から内股などの連絡技の動きができるようになりました。

この親子プログラムにはかなりの手応えがあります、5月の末で一旦終わってしまいますが、できればこのまま続けていきたいと思います。

このように私は柔道の横幅を広げていき、柔道で世の中を良くしていきたいです。

来月で42歳になりますが、まだまだ柔道家として人間として精進していきます。

ありがとうございました。