石井孝法 144

こんにちは.石井です.
covid-19拡大に伴う対応と
その被害とで
言葉にし難いですが
力を削がれる感があります.

これに加えて
この1ヶ月ちょっとで
講道館の先生方が立て続きに
お亡くなりになられました.

4月9日に心不全で
お亡くなりになられた
講道館図書資料部長の
村田直樹先生とは
3月末までメールで問答をしていました.

村田先生は
今年9月に開催される
2020横浜スポーツ学術会議の
基調講演の準備を進めていて,
そこでの内容について1ヶ月程度
問答をしました.

準備していた中身が公開されることが
なくなったと思いますので
一部紹介をしてみなさんにも
深く考えていただきたいと思います.

さきに村田先生が登壇を決めた際の思いを
述べていましたので以下に記します.
「日本武道学会代表シンポジストとして
 登壇を受諾した理由は、
 国内外の研究者群へ柔道思想の精華を
 アピール出来る好機だと考えたからである。
 そしてその目的は、
 柔道思想の素晴らしさを
 インテリゲンチャに理解認識させ、
 普及する為である。」

私は
国内の柔道人口が
減少している理由として
柔道思想の素晴らしさが
伝わっていない,ということが
大いにあると考えています.
村田先生はそこに尽力していたので
本当に残念です.

村田先生の基調講演骨子は
 1)五輪委員受諾の経緯
 2)五輪競技大会/総会出席の足跡
 3)全海外渡航の記録
 4)嘉納治五郎の平和思想
 5)五輪理念/嘉納思想の限界
 6)人類社会を支配しているものとは
 7)結語
であるとし,さらに
「上記で1)〜4)迄は史料紹介に過ぎない。
 ここでとどまるなら学問的作業とは言い難い。
 只の物語にも等しいからである。
 上述では5)に新規性があり、
 6)に意欲的独自性があり、
 学問的愉しみの光りも期待出来る。
 5)6)迄記述して学問であり、
 学術研究と言える。」
と祖述は学問かという問いにも答えながら
6)7)について以下を結論としていました.
(ここからさらに問答を繰り返し
 深める予定だったと思います)

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「嘉納治五郎の平和思想とは何か。
自他共栄である。
その思想は嘉納の如何なる
認識から生じて来たものか。
balanceである。
それは少なくとも嘉納が為した
①柔術の理合い
②体育の原理
③五輪の東西を結ぶ道理等
の解明という三つで説明出来る。
以下具体的説明(ここでは略)ー」
以上を英語で講演する。
次に嘉納の居た時代から、
およそ平和思想とは
真逆の事象を拾い上げ、
歴史の真実とは何かを
問い掛ける。
即ち嘉納の平和思想は
機能したのか、
しなかったのかと。
そして私の講演を結論へ導く。
結論はこうだ。
人間にとって思想とは何か。
夢である。
現実の生とは夢でなく戦いである。
その理由は、
人間とはヒト科の生物であり、
生物のレゾンデートル(存在理由)は
生存競争即ち弱肉強食
the law of the jungleを
生き抜くことであるからである。
そして人間は、
夢と現実のbalanceに
生きる存在なのだ。
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これをみなさんはどう読み取り
考えられるでしょうか.
ここでは柔道思想の素晴らしさは
伝わらないかもしれません.
しかしながら,
嘉納思想の限界
そこにみえる人類社会の支配
balance
平和思想
自他共栄
といったものが
点ではなく線でみえるようになると
柔道思想の素晴らしさが
理解できるだろうと思います.

講道館の先生方には
ご生前のご厚情に深く感謝し
故人のご功績を偲び
謹んで哀悼の意を表します.