OB 小室宏二

「応援」

OBの小室宏二です。
昨年末、生徒を連れてS高校に出稽古に行きました。
そこで、間もなく定年退職するY先生にお会いしました。

Y先生に会うと、いつもあの時のことを謝られてしまいます。

あの時のこと、というのは私が高校1年生、インターハイ支部予選のことです。
試合会場は都立高校の柔道場ということもあり、観客席などもなく、試合場と観客がかなり近い位置にあります。
S高校の生徒と対戦した私は、寝技を主体とした柔道で優勢に試合を進めていました。
すると試合中、S高校の保護者からヤジが飛びました。

「あんなのは柔道じゃね~!反則だ!反則負けにしろ」

もちろんルールに則った戦い方をしていましたが、私の変則的な柔道が気に入らなかったようです。

私もまだ未熟だったのと、そのヤジがあまりにもしつこかったので「待て」で中断したとき、
その保護者の所まで行き『さっきからうるせぇんだよ!』と怒鳴り返してしまいました。

長い柔道人生でも、試合中のヤジに対して怒鳴り返した人を見たことがありません。
さすがに自分でもその1回きりですが、今考えると随分未熟な行動だと反省しております。

Y先生はその時のことをずっと覚えてくれていて、会う度に謝ってくれるのです。
私は逆に恥ずかしくて早く忘れて欲しいのですが、同じ指導者になった立場で考えると、
Y先生と同じ行動をするかなとも思います。

時を経て、私も審判をするようになりました。
支部大会では審判長を務めているのですが、開会式の時には必ずこうお願いしています。

「応援はあくまで自分の仲間を応援してください。審判の先生や対戦相手が不快に思うような応援は慎みましょう」

これは自分自身にも言い聞かせていますし、生徒にも伝えていることです。
勝負に熱中し、審判や相手を批判することは、自己を卑下し、柔道の格式を下げていると思います。

「柔道家はちょっと違う」

柔道家としての所作、振る舞い、応援についても格式高くありたいものです。

早稲田実業学校
柔道部監督 小室宏二